香り | 中目黒 のスピリチュアルカウンセリング

Columunコラム

香り

さきの三日間で一番辛かった事は、何より寒さでした

大げさな言い方かもしれませんが、今までの人生の中

寒さで【死】を意識したのは初めだと思います

 

二日目の夜、タクシーを探して新宿を彷徨っている間

帰れないのではないかという恐怖と極寒の中

一瞬何処からか「ぷ~ん」という甘い香りがしました

こんな夜中にクッキー焼く人もいないでしょうに…

 

大げさな言い方かもしれませんが

人は【死】を意識すると、走馬灯のように過去が振り返ると言いますが

何故か私が思い出したのが、10数年食べていないバターココナッツ

あの香りです

 

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私が2才から3才の頃

弟をおんぶした母に連れられてデパートに行った時の事

 

時は昭和40年代、高度成長期真っ盛りで

デパートはたくさんの人混みでごった返し

人の波をかき分けかき分け屋上行きました

 

最近はあまり見られなくなりましたが、そこにはプチ遊園地があり

象が空を飛ぶ乗り物に母にせがんで乗せてもらいました

 

乗り物から降りた後、その後少し記憶が無いのですが

気が付くと私と母は交番にいました

 

おまわりさんが二人いらしたかな?

 

なんと母は、財布をすられてしまったのです、有り金全部です

後から聞いた話ですが

 

母はデパートの店員に案内されて、交番に行ったそうです

その当時、父が近くで働いていたため

バス代を借りに母は私を交番に預けて父の職場へ向かいました

 

「寒くないかい?」

「足は痛くないかい?」

「悪い人はおじさんが捕まえてあげるからね」

 

二人のおまわりさんが代わる代わる声を掛けてくれました

 

盗られたのが、昼食前だったらしく、私がぐずったのでしょうか?

おまわりさんが机の引き出しをスッと開けて

 

「これ食べるか?」

 

ゴツゴツした手でバターココナッツを差し出してくれました

 

その頃我が家は豊かではなかったので

生まれて初めて食べたバターココナッツを夢中で食べた覚えがあります

 

その時の現状を忘れさせるほどの感動でした

結局箱ごと頂いて、しおれた母と共に帰りましたが

私は一人お菓子の箱を抱えてご機嫌だったそうです

 

40数年前の私は、御菓子をもらえたことが嬉しかったのか

優しくしてもらった事が嬉しかったのか分かりませんが

あの時のおまわりさんの言葉と、ゴツゴツした手は一生忘れられません

 

本来であれば警察官とお呼びする所でしょうけれども

私は愛着を込めておまわりさんと呼ばせて頂きました

 

そんな事をふと思い出し、心が少しだけ暖かくなりました

 

私の体のほんの数パーセントは、バターココナッツで作られたはず

その時の優しさが少しでも残っていると良いな!

 

懐かしい思い出の一つです